The way he looks vol.29
こんにちは、塩沼亮潤です。
先日、生まれて初めて歌舞伎を観に行きました。
恥ずかしながら日本に50年以上生きてきて、こういう世界を知らなかったなと、まだまだ勉強不足だなぁと反省しました。改めて歌舞伎というものを勉強してみたいと思っています。
歌舞伎で感動したのは、手の動きや目線・視線・まばたきに至るまで、一瞬の隙もあるかないかという間際まで、役者の方が神経を張り巡らせているように感じられたことです。
私もお坊さんとして所作を大事にしておりますが、ふと、手の動きや所作というのは、その人がこれまでどんな人生を生きてきたのかという“履歴書”そのものではないかと思いました。普通に歩いている姿や、ご飯を食べている姿、ささいな一挙手一投足から「私はこんな風に生きてきました」「いま迷いを抱えています」ということがわかってしまいます。
歌舞伎を初めて観る私でも、たくさんの役者の方が出てくると、あ、この人はまだまだかな?とか、何か別のことを考えているな?ということは何となくわかります。素人の私がわかるくらいですから、嘘はつけません。
もちろん私たちお坊さんの世界も同じです。
修行する中で一番大事なのは日常生活です。日常生活がきちんとしていなければ、いくら座禅をしても、野山を駆け巡っても、水行をしても、まったく意味をなしません。
私は19歳に出家してから現在まで、36年くらいのキャリアになりますが、ぱっと道で他のお坊さんに出会ったときに、何年くらい修行を積まれた方か、大体わかります。お経の声の質や太鼓・鐘の音もお坊さんによって異なります。また、お寺さんの山門をくぐった瞬間に、ここのご住職はこんな考え方なのかな、というのも雰囲気でわかるようになりました。
人から出る「気」というのは、非常に正直です。
所作はまさにすべての履歴書、嘘はつけない。
ということを改めて感じた出来事でした。
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